2022年9月19日
今回は転調についての記事になります。
転調についてはかなり濃い内容になっていますがなるべく体系的に理解できるように書いていこうと思います。
転調とは元のキーから別のキーに移動することです。
曲を聴いていて「あ、曲調変わった」というときは大抵転調が使われています。
ダイアトニックコードのみの構成でも素晴らしい曲はたくさんありますが、
転調をすることによって
聴き手を「はっ」とさせる効果や、
楽曲と連動してテンションを上げさせたりする効果があります。
また、歌詞の世界感と連動しコード進行を通じて楽曲の世界感をガラッと変える役割もあります。
転調には作曲者の意図が色濃く反映されます。
さらに、転調するということは曲に元のキーと別に他のキーがあるということです。(たくさんのキーへ転調する曲もありますが)
よくコード進行には著作権はないといいますが1つのキーだけで作ると同じキーで同じコード進行の曲が出来ちゃったりします。
楽曲のパクり疑惑とか昔ニュースでやってましたが
ダイアトニックが楽曲の基本なので同じキーで作ると曲が似ちゃう場合が出てくるのも当たり前なのです。
それを解消するアイデアの1つがこの転調だとおもいます。
元のキーと転調後のキーの選び方、転調方法などさまざまなバリエーションがあります。
転調はその曲がその曲である理由の1つなのです。
他には転調理由の特殊な例としては作曲者が歌い手の歌声が一番輝くキーでサビにもっていくために転調させたりする場合があります。小室哲哉さんがこの手法を使っているみたいです。
ex)
My Revolution/渡辺美里
Seven Days War/TMNetwork
転調するキーは全何種類あるでしょうか?
12個の音のトニック(Ⅰ)でメジャー、マイナーがあるので24個、
平行調を同じものとするとキーは全12種類。
転調するとなると元のキー以外の全11種類のキーへの転調があります。
どうやって転調させるかはやり方のアイデアがたくさんあるのでこれはコード譜を見ながらどうやって転調させているかを自分なりに分析してみて下さい。
この記事を読めば自分で「こういうやり方はどうだろう」というのも見つかると思います。
この記事の後半でも転調曲の例とその転調方法を示します。
どのキーへ転調させるかの答えは
「基本的にどのキーへ行ってもいい」
です。
・・・・・っておい!!それが知りたいんじゃ!!
となるので、どのキーへ行ってもいいんですが、
JPOPで多く使われる転調パターンというのがありますので
どのキーへ行くのかはそれに付随してパターンがあるということです。
このブログなりにそれを紹介しようと思います。
前置きがかなり長くなりましたが本題である具体的な転調方法について始めたいと思います。
JPOPで多用される基本的な転調についての考え方としては
「そばにあるキーへの転調」
が基本だと思っておいて下さい。
そばにあるキーってどこじゃい!
下の図を見てください。
これは強進行ダイアトニックの12主音×5弦ルートと6弦ルートの全24パターンです。
どん引きしないでとりあえず見てください笑
強進行ダイアトニックについてわからない方はこの記事から
ダイアトニックコードの覚え方 – ギター初心者がギターを弾くまで
上の列が5弦(下の段)にトニックがあるパターンで
下の列が6弦(上の段)にトニックがあるパターンで強進行の関係でずーっとつなげてみるとこうなっています。
これの5弦ルート(下の段)のキーCを1つ取り出して見てみます。
下に書いてあるのがキーの名前で右側がメジャーキーの場合のダイアトニックで左側がマイナーキーの場合のダイアトニックです。
この関係を同じ主音を持つ同主調の関係と言います。
Cであれば
Cマイナーキー↔️Cメジャーキー
の関係です。
そしてその上に書いてあるのがそれぞれの平行調のキーの名前です。
メジャーキーの平行調はダイアトニックのⅥ(マイナー)であり、
マイナーキーの平行調はダイアトニックのⅢ(メジャー)です。
平行調の強進行ダイアトニックは簡単にわかる – ギター初心者がギターを弾くまで
四角で囲ってあるメジャーマイナー共通の音「2514」を基準ブロックとして隣り合っているブロックどうしは半音高いまたは半音低いキーの関係になっています。
以上の関係を図にまとめるとこういう関係になります。
この辺が「そばにあるキー」です。
そばにあるキーへのJPOP定番の転調のパターンとしては
■ダイアトニックコード内のキーへの転調(平行調以外)
■半音上げ転調、全音上げ転調(または半音下げ、全音下げ)
以上が挙げられます。それぞれ解説していきます。
「暗い過去から未来へ」
を表現する場合が多いです。
また、
同主調転調は元のキーから
同主調転調してサビなどで
元のキーへ戻る事がほとんどなので楽曲の構成としては
「曲の途中で転調して過去の回想シーン等があり、そこからサビ等で転調して前向きに未来へ向かっていく」
または
「過去の暗い記憶からサビ前等で転調して前向きに未来へ向かっていく」
みたいな構成が多いです。
の3パターンがありますのでそれぞれ見ていきましょう。
図で見ると
このパターンの転調です。
この転調をさせる方法は色々考えられますが、よく見られるパターンとしては
メジャーとマイナーの共通であるドミナント、Ⅴ7を介して転調させる事が多いです。(コード自体が同じコード。ディグリーネームも同じ。)
メジャーとマイナーダイアトニック一覧
図で見ると
このパターンの転調になっています。
①メジャーキーを同主調の平行調へ転調させる場合→半音+3個の転調②マイナーキーを同主調の平行調へ転調させる場合→半音-3個の転調
となっています。
これは例えば主音Cから転調させるとした時の関係を見ると
Cの位置に対してD#とAはここにあります。
Cが6弦にある場合どこにあるのかと言うと
この位置にあります。なので
Cに対してD#は半音+3個にありますが、Aは遠い所にあるので
後ろにある方のAの音で考えるとAはCに対して半音-3個の位置にあると考えます。
なのでCがここの位置にあるとイメージすると+3と-3どっちになるのかイメージがわきやすくなるとおもいます。
同主調の平行調への転調は
メジャーを転調させる場合には半音+3個の転調になるので
「未来へ向かって」
をイメージさせ、
マイナーを転調させる場合には半音-3個の転調になるので
「過去の記憶」
をイメージさせる構成に使用できると考えられます。
図で見ると
このパターンの転調です。
①メジャーキーを平行調の同主調へ転調させる場合→半音-3個の転調②マイナーキーを平行調の同主調へ転調させる場合→半音+3個の転調
となっています。
「平行調の同主調への転調」は「同主調の平行調への転調」の逆なので
メジャーを転調させる場合には半音ー3個の転調になるので
「過去の記憶」
をイメージさせ、
マイナーを転調させる場合には半音+3個の転調になるので
「未来へ向かって」
をイメージさせる構成に使用できると考えられます。
■ダイアトニックコード内のキーへの転調(平行調以外)
この転調はダイアトニックコード内のどれかのコードを主音とするのキーへの転調です。
コード自体が共通なのでやり方はたくさん考えられそうです。
例えば
キーC
次のフレーズ
キーG
G→C→D→Em→D→C→D→G(1→4→5→6→5→4→5→1)
みたいな感じです。
弾いてみるとわかりますが転調しているのに転調している感があまりありません。
このパターンの転調で一般的に転調しやすいと言われているのは
があります。
これはどういう事になっているか図で見てみると
例えばキーCメジャーとすると
これがCメジャーで
使う主音が1つしか変わっていません。
使う主音が1つしか変わっていません。
なので転調がスムーズなのですが、
は表裏一体の関係にあり、
転調がスムーズなほどあまり転調した感じが受けづらく、
使う音が全然違うキーである程転調した時の
インパクトは強くなります。
なので前述した「
同主調への転調」はこの観点からも転調自体はスムーズに転調でき、メジャーキーとマイナーキーで共通であるダイアトニックの「2514」以外の3つの主音が変わることから転調の
インパクトも程よくあるという「転調のスムーズさ」と「転調の
インパクト」の
バランスの良さが多くJPOPで使われる所以であるのだと思います。
■半音上げ転調、全音上げ転調(または半音下げ、全音下げ)
図で見てみると
このパターンの転調です。
このパターンの転調はほぼ
曲のラスサビ(ラストのサビ)での盛り上げ
で使われる場合がほとんどです。
なので「盛り上げ転調」とでも言いましょうか。
ダイアトニックの全部のコードが半音上がるので
転調したインパクトが強いです。
半音上げの場合がほとんどですが
全音上げの場合もあります。
半音下げる、または
全音下げるパターンもありますがほとんど使われません。
転調させる方法としてはフレーズの最後で使われる
ドミナントⅤを半音上げてⅤ#に転調させて
ドミナントモーションでⅠ#に着地する手法が多いです。
ちなみにこの方法を使えば延々と半音上げ転調する事ができます笑
この盛り上げ転調パターンは転調して転調したまま曲が終わる事がほとんどです。
(曲のアウトロのフレーズで元のキーのフレーズが使われて終わるパターンも多いです。)
⇓
でも書いたようにダイアトニックコードが変わらずに
フレーズをマイナーから始まってマイナーで終わるか、メジャーで始めてメジャーで終わるかの違いにより曲調の変化を出すものです。
この転調の使われ方としては
マイナーの暗い響きが「過去の記憶」を表現し、
サビやサビ前などでメジャーから始めて
平行調のメジャーキーへ転調(したことと)し、
「未来へ」を表現したりする場合が多いです。
以上のパターンにより、
キーCメジャーから転調するとした場合、マイナーキー(
平行調)はなしとすると
・ダイアトニック内の音のキーD,(Dm=F),E,(Em=G),F,G,A,(Am=C),B
・半音下 B
を列挙すると
の9キーが理論上行きやすい転調先となります。
転調先のキーの種類は全11キー(
C#,D,D#,E,F,F#,G,G#,A,A#,B)なので
行きやすい転調先を引くと
キーF#,G#
が定番ではない、言い換えると行きづらいキーになります。
ディグリーネームで書くと、
キーⅣ#とⅤ#
です。
行きづらいと言ってもこれらのキーへ転調させるア
イデアはあると思うので転調できなくはないといった感じですが、
これらのキーへ行く場合は作曲時に意図を持ってそのキーへ行かせるという意思が必要です。(あえてなんでそのキーへ転調させたいの?というかんじですが・・・)
以下にそれぞれの転調パターン別の転調曲の例を挙げます。
※コード譜はカポ有りで表示される場合がありますので±0で原曲キーにして下さい。
さらに転調前のⅢm(好きなひとにの“ひとに”)からなんと八個も強進行でつなげてスムーズに転調している。
DmからDに戻るときはⅤがメジャーマイナーで共通なのを使ってドミナントモーションでD(Ⅰ)に戻る。Dsus4→Dのフレーズもサビへの盛り上げを演出!
サビの前の前のブロックでマイナーキーに転調してサビ前のブロックでメジャーキーに戻してサビへの盛り上げを演出している。
理論的に素晴らしいコード進行。
・lemon/米津玄師
(2:40らへん)G#m→G#Mの同主調転調
戻る時はトニックG#からG#mキーへ戻る。
おそらくサビではメジャーキーで始まるためG#m→BMの
平行調の転調をしている。
①メジャーキーを同主調の平行調へ転調させる場合(半音+3個の転調)
②マイナーキーを同主調の平行調へ転調させる場合(半音-3個の転調)
(1:06らへんから)G#m→Fm(平行調G#M)の同主調の平行調への転調(半音-3個の転調)
「その目は死んでいる」に#ⅠM(A)のノンダイアトニックコードが入るがこれはⅡのA#m7♭5の3,5,7の音が同じで1のみ半音低いコードなのを利用した代理コードであると思われる。
歌詞と連動してm7♭5のあやふやな響きではなくしっかりとした意思が感じられる。
またこのフレーズと同時にシンセ音の特徴的なフレーズが始まる。
(間違ってるかもしれないが)
Csus4→C→A#→B→A#→A→G#
みたいなsus4の後に半音上がって半音づつ下がっていくみたいなフレーズがあり、これでFmキー(平行調G#メジャー)に転調していると思われる。フレーズを使った転調。
①メジャーキーを平行調の同主調へ転調させる場合(半音-3個の転調)
(1:05くらい)B→G#
ⅢのD#m7をD#sus4にして転調後のドミナントⅤのD#Mに着地(D#sus4→D#)。ドミナントモーションでサビから転調後のトニックG#から始まる。
珍しいサビ前でキーが下がるパターンは渡辺美里の歌声が一番いいキーでサビを歌わせるためにあえてサビでキーを下げたと関ジャムにて小室哲哉談
②マイナーキーを平行調の同主調へ転調させる場合(半音+3個の転調)
サビ1個前のフレーズ頭から急にFmキーへ突入
「あの頃」のフレーズではサブドミナントマイナーのノンダイアトニックコードでメジャーキーの「毎日が楽しく過ぎてゆく世界感」の中にいるが「どんなものにもいつかは終わりが来る」という抗えない世界の不文律をかすかに感じつつも「終わるはずはない」と信じずにいた頃を思う切ない感情を表現している。(サブドミナントマイナーとはメジャーキーのⅣをマイナーキーから借りてきたⅣmにする事。これをモーダルインターチェンジ(借用和音)と言います。※このブログではやっていません。)
サビ終わりで転調は終了。二番がまたDmキーから始まる。
■ダイアトニックコード内のキーへの転調
(1:05)Am→C(平行調への転調)、(1:19)C→E(Amの属調Ⅴの調)。
サビは4→1→6→5というめずらしいコード進行。
サビが終わったら自動で終了。二番はまたAmから始まる
■半音上げ転調
(3:10)G→G#の半音上げ転調
ドミナントの半音上げにより。
(3:57)
C#→Dの半音上げ転調
今までのフレーズでⅢ7の
セカンダリー
ドミナントから強進行先のⅥのA#mを誘発するが素直にA#mへは行かず、それまでの間にⅢ7→Ⅳ→#Ⅳm7♭5→#Ⅴdim→フレーズ頭Ⅵ(A#m)というⅥへ向かうパッシングディミニッシュを含めたズンズンズンズン主音が上がっていくフレーズを使い続け、
Ⅲ7→ときて「またフレーズ頭ⅥのA#mにいきつくんだろうな」と思わせて
Ⅲ7→Ⅳ7ときて「おっ!」となり、Ⅳが
セカンダリー
ドミナントになり(メジャーキーの場合は本来Ⅳは強進行先がない。)、行き着くはずのA#mの半音上のBmに
F#7→Bm(転調後のⅥ。サビの一発目のコード)と強進行でかなりテクニカルな半音上げ転調をしている。
また曲頭でいきなりⅠ→ⅦとJPOPの禁じ手Ⅶm7♭5が出てくるがその後Ⅲ7→Ⅵ(マイナー)と強進行でつながるのでこのⅦm7♭5はⅥ(マイナー)へ行き着くリレイテッドⅡm7♭5→
セカンダリー
ドミナント→Ⅵであると考える。
この曲は全体が強進行、パッシングディミニッシュと理詰めなコード進行になっている。
・let it go
(1:00)Fm→G#
平行調への転調
サビ前のブロックからFmキーをメジャーのように使うがトニックG#は使わずにサビで一気にG#から始める
風よ吹けで#ⅡMのノンダイアトニックコード
■その他
(0:52)キーA→A#→(サビ)A、(3:24大サビ)A→C
Bメロの繰り返しパターンで半音上げ転調、その後サビで元に戻る。
ラスサビ盛り上げで半音上げ転調ではなく
同主調の
平行調への転調を使い(メジャーの場合半音+3個)盛り上げ転調。